身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
(どうして?どうして、そんな事をしたの?)
そんなもういなくなってしまった祖母へ向けた気持ちが、文月をどうしようもない焦燥感を感じさせていた。もうすでに遅い事だというのに。
けれど、それを実行するのは、今までの文月の「あたりまえ」では到底無理な事なのだ。ありえない事のはずだ。
なのに、なぜ走っているのかもわからない。
たが、そうしないと祖母の死の本当の理由がわからないのではないか。そんな直感を感じていたのだ。
文月は、手の中でカサカサと揺れる手紙を一瞥した後に、前を向いて走った。
目の前は自分の吐く息で、どんどん白くなっていった。
家を出た頃は、夕焼け色だった空も、今ではすっかり黒色に変わってた。
ハーハーッと深い息を吐きながら、文月は河川敷を歩いていた。
「ここじゃない………」
文月は、手紙を見て何故か祖母と訪れた事のある場所を探し回っていた。何があるか、わかっているわけではない。むしろ、何故こんな事をしているのか自分でもわからなかった。
桜門への手紙を読んで、そうさせられた。それが1番正しかった。
祖母は手紙の中で「あなた様がいるあの場所で、孫とあの桜をもう一度見たかった」と書いてあったのだ。そのため、文月は祖母と訪れた事のある桜の木がある場所に、桜門という人物に繋がるヒントがあるのではないか。そう考えたのだ。