身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~



 そんな気持ちを素直に伝えると、桜門は少し恥ずかしそうに頬を赤く染めたまま「...だったらまた来てやる。ベットが寝やすいから夜はここで寝てやってもいいぞ」と、言ってくれたのだった。



 
 
 外出の支度をした後、文月は簡単な朝食を作って2人で食べることにした。
 桜門は和食よりも洋食が好きなようで、「パンが食べたい」と言われたので甘いフレンチトーストと、チーズがたっぷり入ったピザパンを作った。そして、コーヒーを淹れて桜門の前に出すと目を輝かせて喜んでくれた。
 が、彼は自分で食べる事が出来ないので、全て文月が持って彼の口元へと運んだ。
 大きい子どものように見えてしまうが、「おいしいな。おまえがつくったものは好きだ」と言われてしまうと悪い気はしないので、どんどん彼に食べさせてしまうのだった。
 苦みのあるコーヒーも桜門は気に入ったようで、「これは今度俺も欲しい」と言われたので、今度買ってきてこっそり燃やしてプレゼントしようと決めた。

 その後、桜並木へと行こうとした時だった。
 文月の携帯が鳴った。始めはチェーンメールかと思ったがバイブの振動音が長く続いたので着信のようだった。


 「ごめんなさい。電話に出てきます」
 「あぁ。待っている」


 文月はスマホの画面を見ると、表情が固まってしまった。
 母親からの電話だった。


 「大丈夫か?」
 「え....あ、ごめんなさい。すぐ出てきます」


 文月の不穏な変化に、桜門はすぐに気づいて、心配そうにこちらに近づいてきた。
 咄嗟に笑顔でそう言ったが、きっと彼は気づいているのだろう。電話の相手が、誰なのかを。



 その電話で、文月はまたお金の催促をされたのだった。



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