身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~


 「桜門。酒を飲もう!桜の酒だぞ」
 「それは、桜の名前の吟醸酒だろう」


 桜花とラベルが貼ってある、一升瓶を持った男はフラフラとした足取りで桜門と文月の方へと歩いてくる。
 その男は真冬だというのに白衣姿だった。眼鏡をかけ、髪は白髪混じり、そして体はほっそりとしていた。いや、細すぎた。文月はその若いだろう男性を見て、ある事にすぐに気づいた。


 「酒を貰っても飲めないぞ」
 「大丈夫だ。さっきそこの近くの公園で燃やしてきた」
 「何をやっているだおまえは。出来ない依頼は受けないと言っているだろう、白銀(しろがね)」
 「では、そのお姉さんに付き合ってもらうかな」
 「文月に飲ませるな」
 「文月さんっていうのかー。俺は白銀白秋(しろがねはくしゅう)だ。AIドールを作ってる、まぁ博士みたいなもんだな」
 「あ、綴文月と申します。ドールの博士って……」
 「文月も挨拶しなくていいから。それと、白銀は自分で博士とかいうなよ」

 
 桜門は、大きくため息を付いたが、白銀という男は、近くの桜の木の下にどっかりとあぐらをかいて座った。


 「あいつは身代わりの依頼をここ1年、俺に頼み込んでいるんだ。かなり変わり者で、断っても全く懲りなくてな。あぁ、なっては話を一通り聞かないと帰らないんだ。悪いが少し付き合ってもらうぞ」
 「……桜門。全部聞こえてるからな」
 「聞こえるように言ってるんだ。それに……文月だってわかるだろ?」
 「………はい」


 桜門は最後の言葉をとても小さな声で話した。文月だけに聞こえるように。
 文月は震える声で返事をして、ちらりと白銀を見た。


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