身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「ほら、飲むぞっ!お猪口も割れてもいいように4つ準備してあるんだ。まぁ、割ってきたんだけど。文月さんも座って」
「あ、はいっ」
白衣のポケットからお猪口を取り出した白銀は、凸凹とした地面にお猪口を並べて酒を注ぎ始める。呼ばれた文月は、その傍に座ると、嫌そうにしながらも桜門もその場に腰を下ろした。
「では、身代わり決定を祝して……」
「勝手に決めるな」
「乾杯っ!」
白銀がお猪口を上げて大きな声でそう言うと、2人もそれにならって小さく手を挙げる。すると、白銀はそれに自分のお猪口を当てて、カチッカチッと鳴らすと、一気にお酒を飲み干した。
「あぁー!この酒、美味しいな!桜味か?」
「だから、普通の吟醸酒だろ」
「でも桜酒なんて、素敵ですね」
「お、文月さんは優しいね。俺も桜酒好きなんだよ!特に夜桜を見ながら最高だな」
そう言って、またお猪口に酒を注ぎ、今度はチビチビと味を確かめるようにゆっくり飲み始める。
桜門も酒は嫌いではないようで、美味しそうに飲んでおり、文月はあまり飲む事のない酒を、ゆっくりと味わった。
「で、2人の関係は?やっぱり恋人か?って事は、文月さんも死んでるのか?」
「文月は生きてるよ。あと、恋人未満」
「え…………」
「何だー。桜門の片想いか。文月さん、こいつはいい奴だ。だから、死んでからもいいから桜門と付き合ってやってくれ」
「なに失礼な事を言ってるんだ。文月は死なない。……というか、白銀お前の話をしろ」