身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「……ドールに自分の命を渡したい、のですか?」
「あぁ。そうだよ。バカらしいと思うかもしれないが、俺は本気なんだ」
「……だからそんな事は出来ないと言っているんだ。人間ではない物に命など身代わりはずがないだろ」
「人形だって生きてる!物だって生きているという考えがあるだろう?!それにやってみないとわからないじゃないか……!」
桜門のため息混じりの声の後、白銀は苛立った声を上げた。
その声を桜門は視線を逸らして、桜の木を睨み付けていた。そして、ボソリと言葉を落とした。
「……ダメなんだ。今回だけは失敗する事は出来ない」
「……桜門さん?」
彼の言葉は近くに座っていた文月にしか聞こえなかったのかもしれない。いや、大きな声であっても白銀に届く事はなかったかもしれない。
ボトッと何かが落ちる音が続いた。
そちらを見ると、持っていたお猪口や一升瓶を桜の床に落として、苦痛な表情を浮かべて体を丸めている白銀の姿が目に飛び込んできたのだ。
「…………んんっっ………くそ……こんな時に………」
「白銀さんっ!?」
「…………」
苦しむ白銀に文月は咄嗟に駆け寄り体を支えた。彼は呼吸が荒くなり、相当苦しいのか冷や汗もかいて、あっという間に顔色は真っ青になった。