身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
どこに座ればいいのか迷ったが、文月は桜門の前に向かい合って座る事にした。
その方が話しやすいという事もあるが、どこか彼に近寄りにくい雰囲気を感じたからだ。
「…………おまえは変わらないな。少し強情なところも」
「強情なのは桜門でしょ?」
その言葉を聞いた瞬間に、何も考えないでポロリと口からこぼれた。
そんな事など桜門に言われた事も言った事もないはずなのに、どこか言い慣れた言葉だった。
彼の呼び方も言葉遣いも違うというのに。
不思議で、そして温かな感覚だった。
文月はすぐに自分の言葉に驚き、ハッとした。が、桜門は全てわかった上で、優しく微笑むだけだった。
「ご、ごめんなさい。変な事を言ってしまって」
「…………白銀は1年前ぐらいに突然俺の目の前に現れた。そして、身代わりの話を伝えると、とても喜んだんだ。目の前でうれし泣きをするぐらいにな」
桜門は、先程のあの感覚の事を話すつもりはないようで、白銀の話を始めてしまった。
あれは何だったのだろう。気になったが、白銀の話を聞きたいとお願いしたのは、自分だったので、そのまま彼の話を静かに聞くことにした。
「AIドールとかいう動く人形を作っているというのはあいつから聞いたはずだが。その初代ドールを白銀はとても大切にしていた。名は、ツボミというらしい。そのツボミは、古いもので白銀しか修理をする事が出来ないぐらい繊細なものらしいのだ。だから、白銀が入院している今は動くことはないなしいな」
「じゃあ、白銀が自分の命を渡したい相手というのは、ドールのツボミ………」
「いや、違う」
「え………」