身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~




 言葉をもらした瞬間に、文月が見ていた夢は覚め、手のひらあったと思った花びらはなくなり、その代わりに握りしめていた。

 今から城に行こう。
 少し離れており、到着する頃には夜になっているはずだ。けれど、そんな事を気にすることなく、文月の足は自然と動いていた。




 電車に乗り、その後はひたすら坂を上る。
 昨日から坂に縁があるな、と思うとすべて祖母が関係している。やはりここには祖母が呼んだのではないか。そんな風にさえ思う。


 呼吸が荒くなり、やっとの事で目的地に到着する。そこには、青樹城という古城があった。昔の偉人が建てたものを再建した城で、観光名所にもなっている。が、もちろん夜中なので城の中には入れない。目の前には小さな照明が当たった石垣と大きな門があった。

 その門の近くまでゆっくりと近づく。
 懐かしさを感じつつも夜に見る大手門は迫力があった。
 そして、その門を見た時に、また少しだけ昔の記憶が甦った。


 「この門……確か名前が桜門だったような………」


 それは祖母が教えてくれた事だった。
 昔は大手門前に桜並木があり、春になると桜もトンネルになっていたのだ、と。そこをくぐって城へ入るため、その大手門は桜門と呼ばれていたのだと、優しく話を聞かせてくれた。今では桜の木はなくなってしまったけれど、確か名前だけは同じだったはずだ。


 祖母はこの桜門に手紙を書いていた。
 そんな事はないはずだった。だけれど、手紙と繋がる場所はここしか考えられなかった。
 そう思うと、文月は自然に口を開いていた。


 「桜門さん………どうして、祖母を殺してしまったのですか?どうして、身代わりになんてしたんですか?」



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