身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
ツボミの事を思っていると、何故かツボミが完成した時の映像が頭に流れ込んできた。
これが走馬灯なのか、と白銀は冷静に分析したが、昔からの思い出を最後に振り返るのもいいな、と昔の記憶に思いをはせた。
ツボミが完成した時、白銀はまだ学生だった。自立して動くAIロボットはまだまだ実用が難しいとされ、学生である白銀が取り組むなど、無駄な事だと大学でもバカにされていた。医療ロボや災害ロボなど比較的前例があり、運用が簡単なものからやってみてみろと、教授からも言われた事があった。
けれど、白銀は固くなにAIドールにこだわった。人間の時間は有限だ。それなのに、一生かかかっても作れないかもしれないと言われているロボットを作りたいのに、他のものに手を出している時間などないと思っていた。
そのため、白銀はずっとずっとAIドールを作り続けていた。卒業までAIドールは完成する事はなかったが、AIのシステムだけは完成し、それが企業に認められたためドール作りも専念できた。が、そこからが難航した。
やはり人間のように細やかな動きをするのは難しかったし、人間の表情やしぐさもわかりにくかった。人との関わりが極端に少ない自分が、人の表情などわかるはずがなかったのだ。そのため、休憩時間は映画などをたくさん見て人間の観察もした。
そこから15年でようやく完成したのだ。
その日の事は今でも鮮明に覚えている。
今回も失敗だろう。そんな諦めが入った気持ちのままドールに電源を入れる。ウィーンと、PCを起動させるような機械音が静かな研究室に響く。
「ここまではいつも通り。さて……次はどこでエラーが起きるか。やはり、表情の選定か。それとも声音か……」