身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~




 タブレットを手に持ちながら、ブツブツと独り言を呟く。資料を見ながら、エラーに向けて設定をしようと待機していた。


 「………ドール起動しました。マスター、設定をお願いします」
 「………え………」
 「あなたがマスターですか?それでは、まず名前をつけてください。まだの場合はドールとお呼びください」


 澄んだ綺麗な女性の声。
 まだほとんどワントーンで、機械らしい声だが表情は笑顔だった。白い肌に大きな瞳は黒色、肩にかかるぐらいの髪も同じ色だ。今まで動くことがなかった、ドールが自分に微笑みかけている。それが示すのは……。


 「成功だ!……うそだろ……本当に……成功した!!」


 じわじわと嬉しさが込み上げてきて、白銀は両手を上げて大声で歓喜した。
 うまくいくとは思わなかった?失敗続きでそう思っていただけで、毎回毎回抜かりなく準備してきたではないか。
 その成果がこの目の前のドールが示してくれたのだ。
 
 白銀の瞳から涙が溢れ始めた。


 「マスター、私の名前はセイコウ、でよろしいですか?」
 「え、あ、違う違う!それはなしだ」


 真っ直ぐと笑みのままで問われて、白銀は正気に戻る。今は簡易設定をしなければいけないのだ。ドールを呼んで指示が出来るように名前をつけなければならない。


 「名前はずっと決めていた。これからのドールが沢山生まれてくるだろう。その第一歩がおまえなんだ。まだまだ未成熟で未発達だけど、かならず花が咲く。だから……君の名前はツボミだ」
 「かしこまりました。私の名前はツボミ」
 「そうだ」
 「マスター。元気を出してください」
 「………ん?」
 「人が泣いている時は慰めるのですよね?」


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