身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
★★★
桜門は死人の名前。
生前は、海里(かいり)という名前だった。
まだ15歳にもならない少年の海里の暮らしは貧しいものだった。
幼くして両親が死んでしまった海里は、物乞いとスリ、盗みをして何とか生活していた。
15歳にもならない子どもに仕事をくれる人は少なく、また田舎のためそんな余裕もない人々が多かった。しかも、数年続いた不作の影響で農家も苦しい生活を世になくされており、畑から野菜を盗むのも一苦労だった。
そして、海里は珍しい銀髪で、人々からは「祟り者」「妖怪との子どもではないか」と不審がられ厄介者として有名になっていた。
そのため小さな町でも過ごしにくい。海里の家は山の中の古い神社が寝床になっていた。
「くっそ。失敗した。でも、たかが小さいイモの1つで、ケチくせーな」
その日、海里は顔に大きなケガを負った。
あまりに空腹から、畑にあったイモを1つだけ拝借したのだ。そこに運悪く畑の持ち主が通りかかり、海里は見つかってしまったのだ。不作で苛立っていたのだろう。その主人は激怒して、思いっきり頬を殴られた。動けなくなった海里からイモと取り戻し、海里をその場に残したまま立ち去ったのだ。そのまま気を失っていた海里は、寒空の下倒れたままになった。数時間後に起き上がり、冷えた体のままのろのろと町へと向かった。
傷は痛む。けれど、寝ても腹が膨れるわけではないのだ。気持ち悪くなるほどの空腹を満たすために、町へと足を向けた。夕方になれば人が多くなり、スリもしやすくなるのだ。持っていた布を頭に巻き、銀髪を隠しながら小さな町へと入っていこうとした。