身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「まぁ……とっても綺麗ね。キラキラして宝物みたいね」
「………こんなボサボサの髪のどこがいいんだ?」
初芽は、目をキラキラさせて海里の髪に触れた。自分の髪を綺麗だと褒めて、頭を撫でるように髪をすいてくれる人など今まで誰もいなかった。
いや、1人だけいた。ほとんど記憶にない母親だ。記憶が曖昧なため、自分の良いような思い出に作り替えられているかもしれないが、母親は「綺麗な髪ね」と頭を撫でてくれていたのを感覚で覚えていた。
そんな懐かしい感覚と、慣れない心地よさへの戸惑いで、海里はますます彼女の顔が見れなくなってしまった。
「そうだわ!………次は、2日後に来てくれるかしら?そして、いつもより早い時間に来てね。その日も屋敷には誰もいないから」
「………早くに?」
いつもはお昼すぎの時間に屋敷に忍び込むが多かった。初芽には「今度は3日後の同じ時間にくれば見つからないわよ」などと、毎回帰り際に言われる事が多かった。が、今回はいつもより早い時間。何かあったのだろうか?と思いつつも、海里は小さく頷いたのだった。