身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~



 自分のお金で誰かのものを買うのは初めてだった。
 生きることに必死になっていた海里は初めて、他の人に興味をもち守りたいとさえ思えた。生き方と優しさを教えてくれた初芽が大切な存在になっていた。
 海里は買ったものを大事に胸に抱き、屋敷に向かい急いだ。

 心の中は、彼女の笑顔が浮かび、気持ちは浮ついていた。
 早く初芽に渡したくて、約束をしていない屋敷へと侵入したのだった。

 いつものように庭をゆっくりと歩き回りを見渡す。そして、屋敷の廊下に侵入しようとした時だった。


 「………おまえか?初芽といつも話しているというのは」
 「っっ!」


 いつからそこに居たのだろうか。
 体格がいい男性が、屋敷から海里を見下ろしていたのだ。白髪混じりだがまだ若い。40代ぐらいの男は黒の着物を着込んでいたが、がっしりとした体型は着物を着ていてもわかるほどだった。そして、すぐにその男性が誰だかわかった。大きな瞳が初芽にそっくりだったのだ。
 この男は、初芽の父親なのだ、と。



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