身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「喉が痛いときは飴を舐めるといいって話を聞いたことがあるんだ。だから、食べて」
「そんな!勿体なくて食べられないわ!」
「飴なんだから食べないと意味がないだろう?」
「そうなんだけど。でも、もう少しだけ飾ってる。こんな素敵な贈り物なんですもの。海里、ありとう。とっても嬉しいわ」
「春になったら飴を買って桜を見よう。花見だ」
「そうね。楽しみにしているわ」
飴を眺めて微笑む初芽の顔はキラキラとしていて、瞳は飴のように輝いている。
綺麗だという彼女の方が、美しいと思った。
「仕事に行ってくる」
「また、来てくれる?」
「あぁ。だから、初芽もゆっくり休んで元気になって」
「そうね。しっかり寝て、あなたと話ができるようにするわ」
「あぁ」
そう言って、海里が立ち上がり部屋から出ようとした。
が、その体が何かに引っ張られてしまい、後ろを振り向く。すると、初芽が海里の衣を掴んでいた。