身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
呼吸が出来ないからだろうか。
うまく考えられなくなってきた。
頭の中には、苦しさと死への恐怖、桜門、身代わり、死人………そして、初芽。その事がぐるぐると回っていた。
そのうちに、もう何も考えたくない。そう思ってしまった。
苦しさと不安から逃れられるのならば。初芽を助けられるのならば、何でもいい、と。
「初芽に飴を沢山贈ってあげたいな」
初芽に飴を贈った時の表情。
花のように可憐で、触れたいと思うほど綺麗で、守りたいと願うほど愛おしかった。
初芽がそうやって笑うのならば、何度でも飴を贈りたい。そう思ったのだ。
そんな海里の願いを聞いた桜姫は、満面の笑みが消え、少し切なげに囁いた。
「つまらない男ね。………でも、いい男よ。海里。………いいえ、桜門」
桜姫は、小さな声を落とすと同時に、海里の頬に唇をつけた。
刹那。
海里の思考はそこで途切れたのだった。