身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
彼女の答えは早かった。
まっすぐで凛とした声音は、彼女らしいと思いつつも、それが自分の事だと思うと嬉しさが込み上げて来て、泣きそうになってしまう。
あぁ、彼女も自分と同じ気持ちだったのか。
年下でみすぼらしい自分。
一人で生きていくために、悪事を働いていたし、初芽の教えがなければ仕事ももらえなかった。そんな自分を彼女はどうして好きになってくれたのか。それはわからない。
けれど、そんな自分であっても賢明に生きていれば、大切だと言ってくれる人が居てくれる。
そして、それが自分の思い人でもあった。
「俺は幸せものだったな」
今までで1番の幸せを感じ、思わず声を洩れてしまった。
けれど、その言葉は誰にも届かない。
「彼の必死に生きようとする力が、私に優しく微笑んでくれる笑顔が、自由な姿が、私の憧れになっていました。私もこうなりたいと、だから生きていきたいと思わせてくれた。そんな海里が私は好いておりました」
「初芽。…………では、私が知っている事を全て話そう。海里くんを探すように捜索を依頼していた。そして、夕方にある知らせが届いたよ。街はずれにある古城の桜の木が何者かによって燃やされていたらしい。そして、その木に傍に1人の遺体が発見されたそうだ。体格は少年のもの、海里くんと同じぐらいの身丈であり、遺体の一部から銀色の髪が残っていたそうだよ」
「そ、…………そんな。………海里が死んでしまった……………」
「亡くなった原因はわからない。それと飴が彼が依頼したものかもね。けれど、私も全て彼が初芽のためにやってくれたのではないか。そう思うんだ。そんな事はこの世の中ではありえない事のはずだ。けれど、そんなありえな事をしてでも彼は初芽の事を助けてくれたのかもしれない、と思ってしまうんだ」
「…………教えてくださり、ありがとうございました。お父様、少し一人で考えたい…………です」
「……………あぁ。わかった。おやすみ」
「おやすみなさい」
初芽の父親は、彼女に何かを話しかけようと思い考えた後、何も言葉は伝えずに、悲しげに眉を下げたまま、初芽の部屋から来た時と同じように立ち去った。海里のすぐ横を通りすぎても、何もわからないままに。