身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
襖が閉まった瞬間。
部屋の中に、彼女の小さく海里の名前を呼ぶ震えた声と鳴き声が響いた。
「海里、…………どうして死んでしまったの。あなたが、私を助けてくれたのよね?私が嬉しいと言った飴をまたくれたのも、…………海里。あなたなのでしょう?」
「…………」
「せっかく元気になった私を見てくれないの?迎えに来てくれないの?」
「…………」
「海里は私の事を思って助けてくれたのでしょ?あなたは優しい人だから、きっとそうだったってわかってる。……………ありがとうって言った方が嬉しいって事もわかってる。けど、私は海里に会いたい。…………会いたいの」
彼女の顔を見てしまったら、自分の感情は爆発してしまうのはわかっていた。
けれど、泣いている彼女を放っておくことなど出来るはずがない。海里は、彼女の方を振り返り、初芽の傍に近寄った。
彼女はポロポロと大粒の涙を流しながら、子どものように泣いていた。その涙は床に置かれた飴のように綺麗だった。けれど、海里はその涙を止めてあげたかった。
初芽の笑顔のために、身代わりの依頼をし、取引をしたのだから。