身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「もうすぐ運動会があるんだろう?その時だけでも学校に行けるといいわね」
「うん……。でも、行っても走ったり運動したりは出来ないから」
「クラスのお友だちに会うだけでもいいんだよ。おばあちゃんも行くから。お医者様に聞いてみようか」
「そう、だね………」
祖母は学校に行く事をよくすすめてくれた。
けれど、休みがちな文月にとって、学校の友達などいるはずもなかった。元気になり学校に行っても授業内容もさっぱりわからないし、流行りの音楽やファッションなど知らない。それに、仲良くしてもすぐにまた入院してしまうのだ。友達など出来るはずがなかった。
「それより、おじいちゃんのお墓参りに行きたいな」
「………そうね。おばあちゃんと一緒に行こうね」
幼い頃になくなった祖父。
祖母と祖父はとても仲良しで、手を繋いで散歩に行く事が日課という、おしどり夫婦だった。祖母と同じように祖父も優しかったのを覚えている。
「やった!じゃあ、1日だけでも外出許可を………っっ………ごほっ」
「文月!?」
外に出てから気分も晴れて、呼吸も楽になったはずだった。けれど、急に胸の痛みを感じたと思ったら、咳が止まらなくなったのだ。