身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「あの………すみません」
「はい?追加でご注文でしょうか?」
「いえ、その、…………私の事、見えてますか?」
文月とその男性の目が合う。
しっかりと文月を見つめている。店員はきょとんとした後、怪訝な表情へと変わった。
「はぁ………見えてますけど………?」
先程よりも低いトーンでそう言うと、その店員はくるりと後ろを向いて注文を厨房へと伝え始めた。
冷たい空気の冬の夜。
胸に抱いて持つハンバーガーの袋。
彼と同じように冷たくなっていた体は、ずつ温かくなっていく。
冷え切った自分の部屋に到着する頃には、少し汗ばむぐらいになっていた。
電気と暖房をつけ、部屋の真ん中でガサガサと大きなハンバーガーを袋から取り出す。
文月はそれにガブリとかぶりついた。
少し冷えてしまっているが、口の中に肉とパンの味が広がる。
「…………ッ……………桜門さんの嘘つき」