身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「……何となくそんな気がしていたから。それに、あんな事が出来るなんて、人間では無理でしょう?」
「なるほどな。………おまえは、みき子の事が知りたくてここに来たのか?」
「はい」
「わかった。ここに来れるのは俺への依頼主か、俺に会いたいと願う者のみだからな」
そう言うと、桜門はゆっくりと歩き出した後、ちらりと後ろを向いた。そして、優しく手招きする。
「こっちへおいで。おまえの話を聞こう。おまえが、なにを知りたいのかを詳しく教えてくれ」
桜門の声かけに文月は、わかっているくせに、と思いつつも頷いて駆け寄る。そして、桜門の後についていった。
相手は死者。
そんな彼についていくなのど、普通ならば怖いと思ったはずだ。けれども、何故か文月は全く恐怖を感じなかったのだった。それどころか、安心してしまう。
それが何故かはわからなかった。
「おまえが聞きたいのは、俺の力か?それともみき子の願いか?」
そう聞いてきた桜門。先程よりも距離が近く、文月は彼をしばらく見つめてた後、ハッとしてしまう。見惚れるとはこういう事を言うのだなと実感してしまった。
桜門が案内したの桜並木の一番奥、桜門の近くにある桜の木だった。どの木よりも大きく立派だった。桜門はその木に寄りかかるように据わると、隣りの地面をポンポンッと叩いた。座れという意味だと理解した文月は、恐る恐る彼の隣に座った。
距離を少し開けて座ったはずだが、桜門はすぐに距離をつめて文月の顔を覗き込んできた。
そういう事で、彼との距離は一段と近くなってしまったのだ。