身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「みき子の願いは、文月の病気を自分が貰い、身代わりになる事。それを俺が叶えた。誰かの役に立たなければいけない関係ではない。無償の愛が家族なのだとわかってほしい」
「だったら、おばあちゃんが私の病気を貰わなくたってよかった!私は何をされなくておばあちゃんが大切だったんだから!」
「みき子は、おまえに愛する人を見つけ、子どもを産み、夫となる人や子どもと無償の愛を育てて欲しかったのではないか?」
桜門のその言葉を聞いて、文月はハッとした。おばあちゃんは、おじいちゃんと深く愛し合っていた。どんな時でも笑い合い、手をとって歩いていた。もちろん、文月の父親の事も大切にしていたはずだ。そして、嫁に来た母の事も。おばあちゃんは、両親の事を悪く言うことはなかった。いつも「わかってくれる日がくるよ」と辛抱強く待っていた。行動していた。
けれど、両親の心を動かすことは、なかったのだろう。
「おばあちゃんの願いだけ叶えるなんて、ずるいです………私の願いも聞いて欲しかった………」
「神に願いをする事は一方的なものだろう?」
「……神様じゃないんでしょ?」
「まぁ、そうだが。人間ではない、願いを叶える存在と言う点は同じだろう」
また、いつの間にか泣いていたのだろう。
冷たい指で文月の頬に触れ、桜門は涙を拭ってくれる。
そして、真っ赤になった瞳や鼻先の文月を優しく見つめ、問いかける。