身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
けれど、文月は死ななかった。
それから、回復をしたのだ。何故こんなに簡単に良くなったのかわからなかったが、文月は愕然とした。また生き残ってしまった。死んだ方がよかったのに。
苦しまなくてもよくなるはずだった。
両親には苦労をかけなくてすむはずだった。
それなのに、どうして!?
そればかり思い、また薬を止めなければ。
そんな事ばかり考えていた。
そんなある日。
目を冷ますと、両親の声が聞こえた。見舞いに来てくれたのだ、と起き上がろうとしたが、母親の言葉が耳に入った瞬間、文月は咄嗟に目を瞑ってしまった。
「この子に死なれたら困るのよ。お金はかかるけど、それ以上にお金が入らなくなるわ」
「あぁ……。危ないと言われた時は肝が冷えたよ。車を納車したばかりだったからな」
「そうよ!海外旅行だっていく予定だったのよ!」
何を話しているのだろう。
これは、本当に自分の両親の会話なのだろうか。文月はドキンドキンッと胸が大きくなった。聞かない方がいい。そう思っても、両親に声を掛ける勇気はなかった。
文月がまだ寝ていると思っているのだろう。両親はまだ話し続けた。