身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
文月と桜門は、また桜の絨毯の上に座る。そして、2つのショートケーキをビニール袋の上に置いて、食べることにした。レジャーシートを持ってきた方がよかったかな、と思ったが目の前の彼は全く気にしてないようで、上機嫌な様子でケーキを見つめていた。
「では、いただくぞ。あー……」
「………えっと……何してるんですか?」
手を合わせてから桜門はすぐにケーキに手をつけずに、何故か口を開けている。不思議に思った桜門は、首をかしげ彼に質問する。
すると、桜門はおや?という表情をして、ケーキを指差した。
「昨日説明しただろう?現世のものは生きているから私は持つことが出来ない、と。これはお焚き上げしてないんだろ?」
「あ………そうでした。うっかりしてしまって……。今から外で焼いてきますっ!」
昨日話を聞いたばかりで、実際に手紙を持てなかったのを見たばかりなのに、ケーキの事は別物と考えてしまっていた。自分の考えが及ばなかった事を謝罪して、文月はケーキをまた箱に戻そうとした。
「待て。そんな面倒な事をしなくていい」
「え?」
「おまえが俺に食べさせてくれ」
「え、えぇー……」
先ほど、桜門が大きな口を開けて待機していた意味がやっとわかり、文月は納得してしまった。自分でケーキを食べられないのなら、文月が食べさせればいい。そう考えたのだろう。
文月は、フォークで彼にケーキを食べさせている自分の姿を想像して顔が赤くなってしまう。小説や漫画などでよくある、恋人同士のようではないか。自分が死人だと言えど、男性にそんな事をする日がくるとは思っていなかっただけに、文月は緊張してしまう。