身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
と、けたたましい音が桜並木の空間に鳴り響いた。それは、1本1本の桜の幹につけられた、無数の小さな鈴が一斉に鳴り出したからだった。風が吹いても鳴ることはなかった鈴。だが、今は鈴自体が自分で震えて、音を鳴らしていた。あまりの音に文月は驚き体を震えさせてしまう。
「な、何これ………」
「久しぶりの依頼のようだ」
「依頼……」
「おまえの初めの仕事になるな」
桜門はそう言うとゆっくりと立ち上がった。
すると、また桜の花びらが舞い始める。
聞いたこともないような鈴の音、そして身代わりの依頼。
文月は不安と恐怖に襲われ、その場から動けずにいた。そして、ただ立ち上がる桜門を不安げに見つめる事しか出来なかった。
これから何が始まるのか。
何を見せられるのか。
そんな怖いという気持ちが表情に出ていたのだろう。
「文月、おいで。いくぞ」
そう言って、桜門は指輪やブレスレットが沢山身に付けている右手を差し出した。そこには、文月とお揃いのブルーダイヤの指輪をある。
ゆったりとした口調と、彼の笑顔で、文月は不思議と不安がおさまってくるのを感じた。恐る恐る彼の手を取ると、桜吹雪は激しさを増し、2人を包み込んだのだった。
その時には、桜門の恋の話など、文月の頭の中に残ってはいなかった。