身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「お願いっ………この人を助けてっ!!お願いっ!!」
次に聞こえてきたのは、女性の悲鳴にも似た叫び声だった。
文月はその声で、ハッと意識を取り戻した。
すると、ネオンで色とりどり光が集まる街中の道路。
少し先に見知らぬ女性が、道路に座り込みボロボロと涙をこぼしながら泣いていた。体は血まみれだった。
そして、そんな彼女の腕の中には、右腕が不自然な状態に曲がり、傷口からは大量に血を流した男が苦痛の表情で倒れていた。
けれど、その男性は全く動いていない。
いや、男性だけではない。泣いている女以外の物、全てが止まっていたのだ。時を止めるとはこんな感じなのだろう。
文月はその光景を見た瞬間に固まってしまったが、桜門は慣れた様子で、泣いている女性に近づいた。
「身代わりを依頼する主はおまえか?」
「………え………あなた、一体………」
桜門の姿を見て、驚愕の表情を見せたその女性は、桜門がただならぬ者だと感じたのだろう。恐ろしさを感じ、顔色が先ほどよりも悪くなる。けれど、腕に抱いている男の事は離そうとせずに強く抱きしめていた。
「俺の名は桜門。その男の怪我、代わりに貰いたいのだろ?」
桜門の言葉に、その女はハッとしすぐに大きく頷いたのであった。