身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「でも、あの母さんが書いてた手紙はなんだったろうな。書いては庭で燃やしてたやつだよ」
「そんなのもあったわね。なんか部屋に残ってたから旅行から帰ったら処分しないと。……ってもうこんな時間っ!早く準備を終わらせないと!」
そう言って両親が動き出す気配を感じたので、文月はすぐにその場を後にしたのだった。
音が立てないように部屋に戻り、文月はそのままベットに潜り込んだ。
懐かしい匂いとそして埃を感じる。文月が帰ってきて掃除した時以来、布団は干してなどいないのだろう。
「………私がおばあちゃんにあの苦しみを渡そうとするはずないじゃない!」
布団を被り、先程の母親の言葉を思い出す。
そんな呪いが出来たとしても、自分は決して祖母などにうつすはずはない。そう断言出来る。大好きだった祖母。優しく、いつも助けてくれた唯一の存在だった祖母なのだから。
両親が話していたように、不思議な事が起こり医者さえも首をかしげた現象。
それが起こり、文月は生かされた。そして、祖母は死んだ。
それは真実なのだ。文月は、瞳から涙が落ちそうになるのを堪えた。