身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「これ、やるよ」
「え…………これって個展の……」
「関係者用。誰かに渡すの初めてなんだ。貰ってくれ」
「あ、ありがとう!……嬉しい……」
ずっと迷っていた個展のチケット。
それを黒夜本人から貰うことが出来た。
そんな幸せな事があっていいのだろうか。ずっと密かに好きだった彼からのプレゼントに頬が緩む。
ジーッとその個展のチケットを見つめてしまう。時間的には仕事終わりにギリギリか行けないかもしれない。けれど、1日だけなら時間を短くしてもいいだろうか。それぐらいなら、父さんも許してくれるはずだ。
そんな風に思い、文月は大切にそのチケットを財布の中へとしまった。
「そろそろ、おしまいの時間になりますー!皆さん、1度集まってください」
幹事の声が場内に響く。
姫白はハッてして後ろを向くと、皆が帰りの支度をして中央に集まっていた。
もう、黒夜との時間も終わりだ。
寂しさを隠しながら「行こう」と、コートを持って、姫白もそちらに向かおうとした。
「家まで送るよ。久しぶりに、実家に帰るつもりだったし」
そんな優しい黒夜の言葉に、姫白の心はすぐに高鳴ったのだった。