身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「あー!ここ懐かしいな」
「この公園でよくお話ししてたよね」
姫白の自宅まで近くの駅から歩く。
久しぶりに見たいと黒夜が提案してくれたのだ。もちろん、姫白ももちろんそれを受け入れた。彼との時間が長くなるならば大歓迎だ。
高校近くの公園を見つけて、2人は昔話で盛りたがった。姫白が大会で負けた時に、黒夜に励まされたり、黒夜の次の作品の題材を2人で探したり。お互い切磋琢磨する関係で、仲がよかった。けれど、姫白だけはただの仲のいい友人とは思っていなかった。
「………なぁ、聞いていいか?」
「何?」
「新体操、もう止めたのか?」
「………うん」
ついに聞かれてしまった。
これで私は約束を破った友達とバレてしまった。
高校を卒業するときに2人は誓い合ったのだ。
黒夜や水彩画で有名になり、姫白は大学の大会で優勝する。それが叶ったら、黒夜が初めての人物画に姫白を描く。そういう約束だった。
「ご、ごめんね。約束守れなくて………。仕事でいっぱいいっぱいになっちゃって。出来なかったの。許してくれなくてもいいよ。私がモデルじゃなくても他の人でもいいから……」
「……姫白………」
「約束破ってごめん…………え……」
しっかりと謝りたかったのに、動揺した心が邪魔をして、誤魔化してしか伝えられなかった。
けど、少しずつ落ち着いてきてしっかり言葉で伝えよう。そう思えたのに。
その言葉は最後まで発する事が出来なかったの。