身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
桜並木に向かう途中に文月と桜門は近くの公園に向かった。
途中でライターを買い、人に見つからないようにピアスにそっと火をつけた。
貴金属は燃えて灰になる事はほとんどないらしい。特にダイヤモンドや赤い宝石ルビーなどはたき火ほどの火力では燃えない。けれど、桜門に届けると願うとどうだろうか。祖母の手紙を焼いた時のように、あっという間に燃えてしまった。
そして、しばらくすると「来たな」と桜門が空を見て静かに言うと、目の前に手を差し出した。掌を皿のようにして待っていると、桜吹雪と共に先ほど姫白から代償として貰った赤い宝石のピアスが桜門の手に降ってきた。
「……すごい、ですね。サンタさんの贈り物みたい」
「サンタ……あぁ、世界中の子ども達の欲しいものを届けるという妖怪か」
「妖怪ではないと思いますけど……」
しかし、一夜で世界中を駆け回るとなると、到底人間には無理な事なので、やはり妖怪の分類なんだろうか。そんなたわいもない事を真剣に考えているのが、妙に面白くクスッと笑ってしまった。