身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「月城黒夜(つきしろくろや)」
「俺は桜門だ。さて、黒夜。おまえに問おう。おまえは何しにここに来た?まさか、身代わりの依頼ではないのだろう?」
「その身代わりの依頼だよ。姫白の腕を返してくれ」
「……おまえ、俺たちの話を聞いていたのだろう。気づいてはいたが、盗み聞きは感心しないぞ、人間」
苦味を含んだ笑みと口調を黒夜に返す桜門だが、当の本人は全く気にしていない様子で桜門を睨み付けていた。
彼は相当頭に血がのぼっているようだ。
「そんな事はどうでもいいんだ。身代わりとかいう力で、俺の怪我が姫白に変わったんだろ?だったら、その怪我を俺に返せ。あいつは関係ない」
「関係ないと言っても、彼女がそれを望み俺を呼んだんだ。そして、その願いを俺が叶えただけだ」
「俺はそんな事望んでねぇんだよっ!」
黒夜は大声を出し、桜門に向かって手を伸ばした。胸ぐらを掴みたかったのだろう。
「………?なっ………」
だが、そこには桜門の姿はすでになく、その後ろにいた文月までその場所にはいなくなっていた。
文月は何が起こったのかわからないまま、少し遠い場所に居る黒夜を見た。彼は驚いた顔で、桜門を見ていた。
一瞬のうちに、桜門は文月を連れて移動してしまったのだ。