身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
17話「リボン」
17話「リボン」
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「よし!完成した………」
出来上がった絵を見て、黒夜は満足そうに微笑んだ。すぐにでもその絵を持って、1階に居る姫白のに見せたかったが、今はきっと仕事中だろう。ウズウズしてしまう気持ちを我慢してながら、完成したばかりの絵を見つめた。
そのには1人の女性が描かれていた。
今までの黒夜は風景画ばかりで、人間な動物などを描いた事がなかった。
別に描きたくなかったわけではなかった。理由は決まっていた。自分の腕に自信がついた時に描きたいと思っていた人がいたのだ。
もちろん、それは彼女だった。
「黒夜ー?そろそろお店閉めてくるねー!」
階段を登ってくる彼女の足音と声が聞こえてくる。黒夜は咄嗟に完成した絵に白に布を掛けた。それと同時にドアが開く。
「お疲れ様、姫白」
「あれ?黒夜……?作業してなかったの?」
作業をせずに部屋立っていた黒夜が不自然だったのだろう。彼女は不思議がっている。
そんな姫白の表情を見て、黒夜はついつい微笑んでしまう。
自分の日常に彼女が居る。それがたまらなく愛しい時間だった。
姫白が退院した後、黒夜の家に彼女を呼んだ。片腕の1人で生活するのは難しい部分も多いはずだ。そんな姫白を支えたいと思った。いずれ、結婚をして一緒に暮らすのだから、早く同棲したっていいのではないか。そう思っていた。もちろん、結婚の話は彼女にはしていないが。
黒夜が作業していた部屋に姫白の部屋を作り、本屋の上の姫白の居住スペースに、黒夜の作業部屋を作らせて貰ったのだ。そうすれば、日中も彼女の手伝いをしながら、えを描けると思ったのだ。昼食は黒夜がつくり、2人で食べる。それがとても温かい時間になっていた。
彼女と付き合うようになって、更に身代わりの事をよく考えるようになった。
何度考えても、身代わりで彼女が怪我を負ったままでいいのか、と考えてしまう。
けれど彼女は、「怪我をした事が良かったとは言わないけど……怪我をしたから、こうやって幸せになれるきっかけになったかもしれないでしょ?何かちょっとした事が違ったら、黒夜とこうやって恋人にならなかったのかもしれない、そう思ったらこの怪我にありがとうって言える気がするの」と言われてしまう。