今夜、この恋が壊れたら、
「私ね、ちょっと嫉妬してたんだよ」
「……え?」



彼の乾いた声が屋上に響いた。きっと驚いただろうし、驚かせてしまっただろうけれど、いましか言えない気がして、私は言葉を繋ぐ。

私は心の中で、嫉妬していて、その気持ちを口に出すことはなかった。


価値観が合わなくて、ぶつかって、お互い話さなくなっても、私はずっと考えていた。

嫉妬して、寂しくなって、知らんぷりして、そういう弱い自分を決して見せようとせずに強がっていた。



本当に自分が嫌で、自分が一番めんどくさかった。



「どちらかが怒って話さなくなるじゃん、いつも」
「うん」

「私その間忘れたことなんてないし、話したいって思ってたよ。ただ言えなかっただけで。嫉妬もするよ、他の子と話すと。でもめんどくさい女になりたくなくて知らんぷりしてたの」
「…………」

「だから、ごめんねなんだよ」



彼は特別かっこいい訳じゃないけれど、いつも笑顔が輝いていて、密かに人気があったことを私は知っている。
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