政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「連絡は俺のほうからしておく。行く前から変なストレスを抱えなくていい」

「……はい」

 きっと電話をしても、素っ気ない声が返ってくるだけだろう。想像しただけでわかる。

 本当は連絡も自分でしたほうがいいのだろうけど、そこだけは甘えさせてもらおう。

「それじゃ行ってくる。今日もできるだけ早く帰ってくるが、もしなにかあったら遠慮なく電話してくれ」

「わかりました、いってらっしゃい」

 玄関で見送ると、弦さんは私の頬にキスを落として颯爽と出かけていった。

 パタンとドアが閉まると、熱くなる頬に触れる。

 だめだ、まだこの甘い雰囲気に慣れそうにない。世の恋人や夫婦はこれが日常茶飯事なのかな? いつか慣れる日が来るのだろうか。

 だけど幸せな毎日に変わりはなく、この日常があるから両親とも立ち向かえる気がするんだ。

 週末は両方の実家に行くから忙しい。体調だけは万全にしておこう。

 少しして来た家政婦に家事などはすべてお願いし、私はゆっくりと過ごした。
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