政略夫婦の授かり初夜～冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す～

　迎えた土曜日。私は初めて弦さんの実家を訪れていた。

「まぁまぁ、未来ちゃんよく来てくれたわね」

「母さんと心待ちにしていたんだ。ゆっくりしていってくれ」

　歓迎を受けて足を踏み入れたのは、純和風の素敵な邸宅だった。弦さんと一緒に暮らしていた家を売り、数年前に郊外にあるこの地に家を建てたらしい。

　ふたりで暮らすのにちょうどいい広さの平屋の一軒家で、通された客間も六畳ほどの部屋。無駄なものがなく落ち着ける空間となっている。広い庭でふたりは家庭菜園を楽しんでいるそう。

　家の近くには大きな川が流れており、毎朝ふたりで河川敷を散歩しているなど、様々な話をしてくれた。

　着いてからふたりの話は止まらず、なかなか私と弦さんは妊娠の報告を切り出せずにいた。
　来たのは十時過ぎ。そして今、客間の壁掛け時計が十二時になったことを知らせた。

「あらやだ、もうこんな時間？　あなた、お昼はどうしましょうか」

「近所の蕎麦屋はどうだ？　あそこの蕎麦を未来さんにも食べさせてあげたいし」

「そうね」