政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「あっ……すみません、笑ったりして」

 失礼だよね、笑うとか。なにやっているのよ、私。

 咄嗟に謝ると、弦さんたちは嬉しそうに頬を緩めた。

「いや、俺たちこそすまない。見苦しいところを見せて」

「本当よ。ごめんなさい、未来ちゃん。もうお父さんと弦ってば、昔から兄弟みたいにくだらないことで喧嘩してばっかりで」

 お義母さんがそう言うと、すかさずお義父さんが反論した。

「なにを言う。母さんだってよく弦とつまらないことでやり合っているじゃないか」

「ちょっとお父さん? 未来ちゃんの前で恥ずかしいことを言わないでちょうだい」

「先に言い出したのは母さんだろう」

 今度は夫婦喧嘩が勃発し、ハラハラしてしまう。すると弦さんはそっと私に耳打ちした。

「大丈夫、いつものことだから。五分も経てば仲直りするよ」

「そうなんですか?」

 なんだか言い合いはエスカレートしているようだけど、本当に大丈夫なのかな。

「こうなったら俺には止められないから、行こう」

「え? でも」

「いいから」

 ふたりは私たちのことなど視界に入っていない様子。そっと客間を出てもまだ言い合いを続けている。
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