政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 そのおかげで弦さんの言う金銭感覚はある。……だけどちょっとおもしろくない。弦さんは比べられるほど多くの女性と出会ってきたってことだもの。

「未来? どうした、気分が悪いのか?」

 なにも言わずにいると、勘違いをした弦さんが心配そうに私の顔色を窺う。

「いいえ、違います。……その、弦さんは私と結婚するまで多くの人と出会ってきたんだなって思ったら、おもしろくなくて」

 キュッと唇を噛みしめると、弦さんはキョトンとなる。だけどすぐに表情を崩し、私の肩に腕を回した。

「なんだ? その可愛いヤキモチは」

 彼のほうへ引き寄せられて囁かれた言葉に、かあっと顔が熱くなる。

「嬉しいよ、未来が本音を曝け出してくれて。俺にだけはどんなことでも話してほしいし、もっと甘えてほしい。今みたいなヤキモチも大歓迎だ」

 クスクスと笑って言われ、ますます居たたまれなくなる。

「いいんですか? こんな私で。……ワガママじゃないですか? 最近、弦さんには甘えてばかりですし」

 料理を作ってくれるし、休日の家事は一緒にやってくれる。買いものにだって付き合ってくれる。

 これ以上彼に甘えてしまってもいいのだろうか。
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