政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「今日は疲れただろ? 大丈夫か?」

「はい、とっても楽しかったです」

 帰宅後。順番に入浴を済ませ、ベッドの中でお互いのぬくもりを感じながら一日を振り返る。それが私たちの最近の日課となっていた。

 平日はそれぞれなにをして過ごしたかを話し、休日は一緒に過ごした時間の中で楽しかったことを語り合う。この時間がたまらなく幸せなひと時となっている。

「ただ、お義父さんとお義母さんには、お見苦しい姿を見せてばかりでしたが……」

 弦さんとの甘いやり取りだけじゃなくて、食事をした席では泣いちゃったもの。

「父さんと母さんはなんとも思っていないよ。むしろ俺たちの仲が良いことを喜んでいるだろうし、未来が泣いてしまったのも可愛いと思っているよ」

 そうなのかな? そうだと嬉しいな。

「明日は未来の実家だ。……明日の夜もこうして楽しかったなって話せるといいな」

「……はい」

 返事をしたけれど、それは叶わない願いのような気がする。だって私、両親と過ごしたたくさんの時間の中で、一度も楽しいと思ったことなんてないもの。
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