政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「敬一君、危ないだろう。未来が転んでいたら、どうするつもりだ」

「それはっ……謝ります。ただ、姉さんと会えたのが嬉しくて、つい。ごめん、姉さん」

 謝る敬一に首を横に振った。

「ううん、大丈夫。でも! これからは気をつけてね」

「うん」

 素直な敬一に頬が緩む。

 敬一にはまだ、妊娠していることを伝えていない。だからいつもの調子で私に抱きついてきたのだろう。

「じゃあ今なら抱きついてもいい? 優しく抱きしめるから。久しぶりに姉さんのぬくもりに触れたい」

「えっと……」

 いや、昔から敬一はよくスキンシップをしてきた。だから不自然なことではないけど、すぐ近くには弦さんと家政婦がいるし。

 戸惑っていると、弦さんに背後から抱きしめられた。

「だめに決まっているだろう。未来は俺の妻だ」

 独占欲全開の言葉に胸が震える。弦さんに妻と呼ばれるのは初めてだ。結婚しているわけだし、彼が私を妻と呼ぶのは当然なんだけど、呼びかたひとつでこんなにもときめてしまう。
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