政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 ひとりドキドキしていると、敬一に手を引かれて弦さんから引き離された。

「俺は姉さんの弟です。姉弟の触れ合いまでもお義兄さんに口出しされる筋合いはございませんが?」

 笑顔で言う敬一に、弦さんは再び私を引き寄せた。

「敬一君は結婚を考えている相手がいるほどいい歳の男だ。それなのに恥ずかしくないのか? いつまでも姉にべったりで」

「えぇ、恥ずかしくありません。弟が姉にべったりでなにがおかしいんですか?」

 開き直る敬一に弦さんは苛立っている様子。

 どうしたらいいの? この状況。

 一触即発の空気に、私も家政婦も途方に暮れていると、廊下の先にあるリビングのドアが開いた。

 部屋から出てきたのはお母さん。私たちを見るや否や私に鋭い目を向けた。

「なにをしているの? 未来。来たなら早く弦さんを部屋に通しなさい」

「すみませっ……」

 久しぶりにお母さんに叱られ、肩がすくむ。咄嗟に謝ると庇うように弦さんが私の前に立った。

「ご無沙汰しております、お義母さん。すみません、敬一君と話し込んでしまいまして。ですので、未来はなにも悪くありません。なぁ、敬一君」
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