政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「そうだよ母さん。お義兄さんの言う通り、俺が姉さんたちを引きとめていたんだ。それより久しぶりに姉さんが帰ってきたんだ。『おかえり』って言うのが先じゃないのか?」

 弦さんに続いて敬一が責めるように言うと、お母さんは悔しそうに唇を噛みしめた。

「そうね、悪かったわ、未来。おかえりなさい」

 感情のこもっていない声で淡々と言うところは、なにひとつ変わっていない。お母さんは昔からそう。

 なにかと敬一が庇ってくれていたが、そのたびにおもしろくなさそうにする。

 謝ってくれたけど、絶対に悪いと思っていないよね。

「悪かった、姉さん。俺のせいで」

 コソッと耳打ちしてきた敬一に首を横に振る。

「俺もすまない、守ると言ったのに」

 もう、弦さんまで。

「大丈夫です。敬一も気にしないで。……行きましょう、弦さん。父と母が待っています」

 家政婦にお茶をお願いし、弦さんをリビングに案内する。先に部屋に入ったお母さんに続いてリビングに足を踏み入れると、ソファに座っていたお父さんが立ち上がった。
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