政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「これはこれは弦君、久しぶりだね。忙しい中来てくれてありがとう」
 一度も向けてもらったことがない笑顔で歩み寄ってくると、お父さんは私には見向きもせずに弦さんの肩に触れた。

「どうぞこちらへ」

「え? あの……」

 グイグイと肩を押されて弦さんは困惑気味。心配そうに振り返って私を見る彼に、「私なら大丈夫です」と言うように首を横に振った。

 お母さんだけじゃなくお父さんもか。久しぶりに会っても私には興味がないんだ。

 弦さんをもてはやすお父さんとお母さんを見て、なんとも言えぬ気持ちになっていると、隣で見ていた敬一は怒りを含んだ声で言った。

「信じられない、姉さんと会うのは久しぶりなのに、挨拶もしないなんて。俺、父さんに言ってくる」

「待って敬一。私なら大丈夫! 気にしていないから」

 慌てて引きとめると、敬一は複雑そうに私を見る。
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