政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「姉さんは昔からいつもそう。我慢してばかりだ。……言えば俺が父さんに叱られるからだろ? そんなの気にしなくていいのに。どうして父さんと母さんは、姉さんにだけあんなに冷たいんだよ。家族なのに」

「敬一……」

 悔しそうに唇を噛みしめる姿に、胸がギュッと締めつけられる。

 自分だけ愛されないと嘆き、つらい思いをしてきたけれど、私と同じように敬一も苦しんできたのかもしれない。

 真実を知らないからこそ、自分だけ愛されることに罪悪感を抱いていた? だったら私以上につらい思いをしてきたよね?

 少し考えればわかることなのに、どうして今まで気づかなかったのだろう。敬一の優しさに甘え過ぎていた。

「ごめんね、敬一。弱いお姉ちゃんで」

「えっ?」

 私がもっと強くいられたら、敬一を苦しめることはなかったはず。

「でも、これからは変わるから。敬一を心配させないようにする。見てて、私……頑張るから」

 笑顔で言うと、敬一は目を大きく見開いた。

 妊娠の報告は私からしたい。自分の口からちゃんと伝えるんだ。
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