政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「それにしても弦さんってば、ずいぶんと心配症なんだね。未来をここまで送るためだけに仕事を抜けてきたんでしょ?」

「……うん」

 そうなのだ、妊娠してからというもの、お腹が大きくなるにつれて弦さんの私に対する過保護ぶりに拍車がかかっている。

 わざわざ美香がマンションから近いこの店にしようって言ってくれたのに、ひとりで行かせてなにかあったらと思うと心配で仕事も手につかないらしく、会社を抜けて帰宅し、ここまで私を送り届けてくれたのだ。

「愛されているねぇ、未来と赤ちゃん。病院のマタニティ教室には全部付き添ってくれたんでしょ? 家のこともほとんどやってくれるって言うじゃない。きっと弦さん、子煩悩ないいパパになるんじゃないかな」

「うん、私もそう思う」

 妊娠に関する本を買い込んできて、どういった変化が生じるのか、注意すべきことはなにかを調べてくれて、常に私に寄り添ってくれている。
 育児書もすでに数冊買っていて、毎夜読んで勉強しているもの。

「それに弦さんのご両親も今から生まれてくることを、心待ちにしているんでしょ? 言ってたもんね、一部屋まるまる赤ちゃんへのプレゼントで埋まっているって」

 真実だから、これには苦笑いしてしまう。
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