政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 病院に着いたらすぐ分娩室に入って出産だと思っていたら、まだ子宮口が開いておらず、あと数時間はかかると言う。

 そんなにこの痛みに耐えなければいけないのかと思うと気が遠くなりそうだったが、もしかしたら赤ちゃんが弦さんも一緒に誕生の瞬間に立ち会ってほしいから、お腹の中で頑張っているのかもしれない。そう思うと頑張れる。

 陣痛が始まってどれくらいの時間が過ぎただろうか。病室には夕食が運ばれてきた。看護師は食べられるだけでいいと言っていたが、とてもじゃないがどれも食べられそうにない。

「未来、つらいのはわかるけどしっかり食べなさい。人によってお産は数日にも及ぶの。体力をつけないと」

 それを聞いたら食べないわけにはいかなくなる。ゆっくりと起き上がり、まずはオレンジに手を伸ばした。

 口いっぱいに酸味と甘みが広がり、食欲を掻き立てられる。ちょうど陣痛も落ち着いている時で、箸を手に持ちご飯やおかずも口に運んでいく。
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