政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「西連地さん、分娩室に移動しましょう」

「はい」

 まだ弦さんは来ていない。もしかしたら間に合わないかもしれない。

 ベッドから降りて看護師に支えられて分娩室へと移動する。その道中、お父さんとお母さんは「頑張ってね」と私を励まし続けた。

 そして分娩室の前に着き、ふたりに見送られて中に入ろうとした時、バタバタと大きな足音が聞こえてきた。

「未来!」

 息を切らして駆け寄ってきたのは弦さんだった。

 急いで来てくれたようでジャケットを手に持ち、ネクタイは緩んでいる。今朝は綺麗にセットされていた髪は乱れていた。

「すまない、遅くなって」

 そんなことない。明日帰る予定だったのに、こうして駆けつけてくれて嬉しい。

「ありがとうございます、弦さん。一緒にこの子を迎えましょう」

「あぁ」

 また痛みに襲われ、背中を丸める。

「よかったですね、間に合って。急いで着替えをしていただき、消毒をお願いします」
 看護師は私を支えながら言うと、弦さんは分娩室から出てきた別の看護師に案内される。
< 219 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop