政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「弦君、上着は預かろう」

 中に入る前にお父さんに声をかけられ、弦さんはジャケットをお父さんに預けた。

「すみません。それと未来のそばにいてくれて、ありがとうございました。また子供が生まれたら改めてお礼に伺います」

「いや、こちらこそありがとう。……私たちの孫の誕生をここで待っているよ」

 お父さんに言われ、弦さんは頭を下げて足早に別室へ向かった。

「では西連地さんは先に分娩室に行きましょう」

「はい、お願いします」

 両親に見送られ、分娩台に座るといよいよこの子に会えると実感する。

「痛っ……」

 頻繁に襲われる痛みに顔が歪む。

「大丈夫か? 未来」

 すると着替えを終えた弦さんが隣に寄り添い、そっと手を握ってくれた。

 お父さんとお母さんがそばにいてくれてとても心強かったけれど、やっぱり弦さんが一番安心できる。

「西連地さん、もう少しで元気な赤ちゃんに会えますよ。頑張ってください」

 助産師に励まされ、必死に痛みに耐える。
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