政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「気にするな。……俺も俺で楽しんでいるから」

 付け足して言うと、未来は大きく目を見開いた。そしてジッと見つめてくるものだから居たたまれなくなる。
 俺が遊園地を楽しんでいることが、それほど驚くことなのか?

 眉根を寄せると未来は慌てて言った。

「わ、わかりました! ……弦さんも楽しいなら嬉しいです」

 そう言うと未来は、恥ずかしそうにはにかむ。

「……そうか」

 俺が楽しいなら嬉しいのか。

 未来に言われた言葉を頭の中で繰り返すと、なんとも言えぬ気持ちになる。そして伝線したように気恥ずかしくて、未来の顔が見られなくなってしまう。

 待つ間、お互い口を開くことはなかったが、決して居心地が悪いものではなかった。
 言葉を発しなくても未来が隣にいるだけで心地よい。

 四十分待ってアトラクションに乗り終えた頃には、十二時を回っていた。

「そろそろお昼にしようか。なんでも食べたいものを選んでくれ」

 飲食店が掲載されているページを開いてパンフレットを渡すと、未来は戸惑っている様子。

「いいんですか? 私が選んで」

「あぁ。俺はなんでもいい」

 そう言うと未来は目を輝かせた。
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