政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「えっと……実はさっきからずっとすれ違う人たちが食べているものが気になっていて」

 未来が指差したのは、食べ歩きできるチキンとチュロス。

「こういうの、あまり食べたことがないので食べたいです」

「了解。好きなだけ買ってやる」

 初めて食べたいものを言ってくれたのが嬉しくてそう言えば、未来はフフッと笑った。

「弦さん、ひとつずつで充分です」

 クスクスと笑いながら言う姿に目が離せなくなる。

 未来の笑った顔を初めて見たが、そうか。……未来はこんなに可愛い顔をして笑うんだな。
 笑うとえくぼができて愛らしい。ずっと見ていたいほどだ。

 しばし眺めていると未来のお腹が鳴った。

「あっ」

 咄嗟にお腹に手を当てると、未来の顔はみるみるうちに赤く染まっていく。

 これには思わず笑ってしまった。

「アハハッ。悪かった、もっと早くに昼飯にすればよかったな」

「いいえ、その、違うんです! ただ単にお腹が鳴っただけでして、決して空腹というわけではなくてですね……!」

 よほどお腹が鳴ったことが恥ずかしいのか、必死に否定する姿も可愛いんだからどうしようもない。

「わかったよ、早く行こう」

 笑いをこらえながら彼女の手を取ると、「本当に違いますからね」と念を押してくるものだからまた笑ってしまった。
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