政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 新婚だと当たり前のことなの? それとも早く子供が欲しいから私を抱いているだけ? ……妊娠したら、今のように触れてくれなくなるのだろうか。

 そう思うとひどく寂しいと思う自分がいて、動揺してしまう。
 なに? 寂しいって。私、どうかしちゃってる。

 結婚した以上、弦さんに言われた通り家事を完璧にこなし、早く後継ぎを身籠ること。そして生まれた子供をしっかり育てることだ。

 決して弦さんのことを好きになってはいけない。好きになったって、相手に想われなければ、ママみたいに傷つくだけだもの。
 今の生活に慣れてしまったら、自分がつらくなるだけ。

 いいじゃない、こんな素敵なマンションに住むことができて、なに不自由ない暮らしが約束されているのだから。これ以上を望んだらバチが当たる。

 そう自分に言い聞かせて、掃除を再開させた。


 この日の夜。遅くなると言っていたのに弦さんが帰ってきたのは、二十時過ぎだった。

「悪い、遅くなって」

「あ、いいえ」

 玄関で出迎えた私は拍子抜けしてしまう。

 いや、たしかに結婚してからというもの、弦さんは十九時前には帰ってきた。だけどそれはどうやら仕事を持ち帰っているようで、一緒に夕食を済ませた後、自分の部屋に篭もることも多かった。
< 36 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop