政略夫婦の授かり初夜～冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す～
　これも愛されていると勘違いしそうになる要因のひとつだった。もしかしたら彼は、私との時間を少しでも多く過ごそうとしてくれているのかもしれないと。

　今夜だってそうだ。まだ二十時だというのに、『悪い、遅くなって』だなんて……。

　気持ちが大きく揺れながら、彼の半歩うしろについてリビングへ向かう。

「夕食は済ませたか？」

「まだですけど、あのすみません。今夜は遅くなると聞いていたので、簡単なものしか用意していなくて……」

　てっきり深夜になると思っていた。お父さんも仕事が忙しいと帰ってくるのは日付が変わってからだったし。

　だから遅い時間にでもちょっと食べられる、野菜をたっぷり入れたうどんにしてしまった。私ひとりだったらなんでも構わないと思って。

　いつも必ず五品以上おかずを用意していたというのに、うどんだけしか作っていないとは言いづらい。

　すると彼はジャケットを脱いでソファにかけると、キッチンへ向かう。

「あっ……！」

　慌てて後を追うと、弦さんは鍋の蓋を開けた。
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