政略夫婦の授かり初夜～冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す～

「アハハッ！　弦、お前本当に未来さんにベタ惚れだな」

「今の弦の姿を会社の人が見たら、別人だと思うわよ？　きっと」

「なんとでも言え。俺は他人にどう思われようが気にしない」

　きっぱりと言ったところで、弦さんのスマホが鳴った。どうやら会社からのようで彼は「悪い」と言って席を立ち、リビングから出ていった。

　さっきのも、両親を安心させるための嘘？

　混乱していると、廊下で話をしている弦さんに聞こえないよう、お義父さんが声を潜めた。

「私は結婚してからずっと未来さんに会いたくてね。毎日のように弦に会わせろと催促していたんだ。……でもあいつときたら、未来さんのことを心配して会わせてくれなくてね」

「私の心配、ですか？」

　オウム返しすると、お義父さんは頷いた。

「大学を卒業してすぐに弦と結婚し、新しい生活に慣れようとしているのに、私たちに会うことで負担をかけたくないと言ったんだ。だから会うのは、未来さんが弦との生活に慣れてからにしてくれと」

「あんなに仕事人間だった弦が、最近ではほぼ毎日定時で上がっているそうじゃない？　私、お父さんからその話を聞いたときは本当にびっくりしちゃって。……仕事ばかりで結婚もせず、このままずっとひとりでいるんじゃないかって心配していたの。だから今のあの子を見ていると嬉しくて。ありがとうね、未来ちゃん。弦と一緒になってくれて」

「そんなっ……！　それは私のほうです」